原価計算基準の設定について
原価計算基準 - 原価計算基準の設定について
わが国における原価計算は,従来,財務諸表を作成するに当たって真実の原価を正確に算定表示するとともに,価格計算に対して資料を提供することを主たる任務として成立し,発展してきた。
しかしながら,近時,経営管理のため,とくに業務計画および原価管理に役立つための原価計算への要請は,著しく強まってきており,今日,原価計算に対して与えられる目的は,単一ではない。すなわち,企業の原価計算制度は,真実の原価を確定して財務諸表の作成に役立つとともに,原価を分析し,これを経営管理者に提供し,もって業務計画および原価管理に役立つことが必要とされている。したがって,原価計算制度は,各企業がそれに対して期待する役立ちの程度において重点の相違はあるが,いずれの計算目的にもともに役立つように形成され,一定の計算秩序として常時継続的に行なわれるものであることを要する。ここに原価計算に対して提起される諸目的を調整し,原価計算を制度化するため,実践規範としての原価計算基準が,設定される必要がある。
原価計算基準は,かかる実践規範として,わが国現在の企業における原価計算の慣行のうちから,一般に公正妥当と認められるところを要約して設定されたものである。しかしながら,この基準は,個々の企業の原価計算手続を画一に規定するものではなく,個々の企業が有効な原価計算手続を規定し実施するための基本的なわくを明らかにしたものである。したがって,企業が,その原価計算手続を規定するに当たっては,この基準が弾力性をもつものであることの理解のもとに,この基準にのっとり,業種,経営規模その他当該企業の個々の条件に応じて,実情に即するように適用されるべきものである。
この基準は,企業会計原則の一環を成し,そのうちとくに原価に関して規定したものである。それゆえ,すべての企業によって尊重されるべきであるとともに,たな卸資産の評価,原価差額の処理など企業の原価計算に関係ある事項について,法令の制定,改廃等が行なわれる場合にも,この基準が充分にしん酌されることが要望される。
昭和三十七年十一月八日企業会計審議会
原価計算基準 - 原価計算基準の設定について - の解説
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原価計算基準 - 原価計算基準の設定について - の私見
日本における原価計算基準が制定されたのは、昭和37年ですが、それ以来一度も改訂されていません。
なぜ、いままで改訂されなかったのかについては、疑問ですが、原価計算基準の逐条解説をとおして、改訂すべき点などの私見を述べさせていただきたいと思っておます。
まず、昭和37年と現在では、原価計算の目的は異なってきているのでしょうか。
本基準「原価計算基準の設定について」の中では、原価計算の目的を「財務諸表を作成するに当たって真実の原価を正確に算定表示する」とともに「価格計算に対して資料を提供すること」としています。
また、それに加えて、経営管理目的のために、「業務計画および原価管理」の要請があるとしています。
つまり、原価計算の主たる目的は、財務諸表作成目的、価格計算目的、業務計画目的、原価管理目的といえます。
この目的は、現代においても、企業において重視すべきことであり、昭和37年と大きく変わらないと思われます。
本基準「原価計算基準の設定について」の中で、「原価計算制度は,各企業がそれに対して期待する役立ちの程度において重点の相違はあるが,いずれの計算目的にもともに役立つように形成され,一定の計算秩序として常時継続的に行なわれるものであることを要する」となっていますが、私は、この一文について、疑問を呈したいと思います。
企業における原価計算制度として、異なる目的のために、「いずれの計算目的にもともに役立つように形成され」ることは、困難なのではないかと感じています。
また、「原価計算基準は,かかる実践規範として,わが国現在の企業における原価計算の慣行のうちから,一般に公正妥当と認められるところを要約して設定されたものである」とありながら、昭和37年以降現在まで、「わが国現在の企業における原価計算の慣行」を定期的に調査し、「一般に公正妥当と認められるところを要約」し、本基準の見直しあるいは有用性を確認する必要があるのではないかと思っています。
原価計算基準 - 原価計算基準の設定について - のIFRS対応との影響
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